私のギターの入り口はクラシックギターだったので、人生初のギターヒーローは村治佳織さんでした。
出会いは野菜ジュースのCM。きれいな女の人がものすごい曲をギター1本で弾いている…!!
まだまだ簡単なコードを弾いて伴奏するくらいしかできなかった私は衝撃でした。ギターでこんなにカラフルな演奏ができるなんて!
その後友達からCDを借りたり、親にアランフェス協奏曲のVHS(当時はね…DVDじゃなかったんです)をプレゼントしてもらったり。どんどん村治さんのギターの世界に惹き込まれていきました。
先日、そんな私のギターヒーローである村治さんのエッセイ「いつのまにか、ギターと」が発売されました。
ギタリストという以前に、人として、村治さんの考え方に妙に共感をおぼえました。この本は、村治さんの自然体でいて素敵な言葉がたくさん散りばめられています。
一回で終わらせずに時々取り出してきて読みたい。読むときによって、自分の感じ方も変わるかも。そう思わせてくれる一冊でした。
憧れのギタリストの本であるということを差し引いても私が読んだ本の中でかなりのヒット作だったので少しだけ、感想を綴っていきたいと思います。
下町、女子校、ギター
この3つのキーワード、私と村治さんの共通点です。
村治さんの考え方に共感できたのは、もしかしたら育ってきたバックグラウンドが少し似ているからなのかもしれません。
特に、女子校の部分は共感要素がいっぱい。本編とは別に、中高時代のお友達とのトークが収録されているのですが、その会話がもう、女子校のそれ。読みながら声を出して笑ってしまいました。
村治さんは10代の頃からCDを出したり、演奏活動をされていたので学校生活よりも音楽をしていた密度のほうが濃いのかなあと思いきや、私と同じように、お友達と楽しく中高時代を送っていたんだなあ、としみじみ思いました。
ギターヒーローだけど、中身は私とあんま変わらないひとなんだなあって。
トークに登場していた仲良しさんも、すごくアクティブな方たち揃いで、類は友を呼ぶというか、そんな雰囲気を感じました。
私も今でも中高時代の友人とはたまに会ったりしていて、卒業してからもずっと仲良くしてもらってます。そして、彼女たちは、やっぱり自分の友達だよなあって思えるくらい「類友」なんですよね。
そして、そういう友達に囲まれて、大人になっていったんだなあと思うと、私が村治さんに共感するのも自然なことなのかな、と思いました。
人との深い絆
いつも心からわかり合える友だちがいないかをずっと探し求めてる
いつのまにか、ギターと より
私が共感を覚えた言葉のうちのひとつです。
村治さんは、高校くらいまではこのように考えていたみたいです。私もそうで、ずっと親友と呼べる存在を探していました。
幸いなことに、そう呼べるひとを見つけることができたのですが、こういうのって見つけられたことが奇跡といえるくらいものすごい確率なんじゃないかと思います。
村治さんは、パリの留学を経て「誰かと仲を深めていく楽しさ」を知ったと仰っています。
あー、大人になったら、たしかにそうかも。
探すのではなく、深めていく。(なんか、字が似てますね)
私は2020年の目標として、「人との繋がりを大切にする」というテーマを挙げました。まさに私が思っていた方向は「誰かと仲を深めていく」感じだなあと。
学生の頃はいろいろな人たちと広くつながっていくのが楽しかったけれど、最近は気の合う人のことをもっとよく知って、自分のことも知ってもらって、仲良くなれるといいなあと考えています。
誰かがいて初めて私はいろいろな存在になれるわけです。
そのどれも、自分ひとりでいる時には出てこない自分の一部。
その人といる時だからこそ引き出してもらえる自分の一部。
いつのまにか、ギターと より
この言葉がストンと落ちたというか。人のことを知って、仲良くなった先に新しい自分と出会えるのかなー、なんて。
私はやっぱり人と人とのかけ算が好きなんだな、なんて思ったりしました。セッションもそうだけど、もっと大きい人生という場でもそれを求めている気がします。
自分のテーマとシンクロする
村治さんは病気で休養されていたことがありました。そのときに仲良くされていた吉永小百合さんご夫妻から「なりゆきで」という言葉をもらって救われたと仰っています。
なりゆきで、って言うと一見流されているような、ふわっとしたように思えますが、今置かれた環境に浸かってみる。できる時は一生懸命やって、休む時はしっかり休もう、というふうに思えたみたいです。
この言葉もしっくりきました。今のところ私は病気もしていないので、やれることをやる!という感じではあるのですが、村治さんの言葉を借りれば「人生は当たり前ではないことの積み重ね」です。
当たり前ではないことが目の前で起きているから、その時置かれた状況に身を任せる。その時自分にできることをやる。
人事を尽くして天命を待つ、ということかもしれません。この言葉、昨年観劇したミュージカルのセリフの中にあって、知らない言葉というわけではなかったのにその時の私の心にズシリと響いた言葉です。
それに影響を受けたのか、私は年始に目標として「その瞬間を大切にする」というテーマもかかげています。それともつながって、ますます村治さんに共感したのでした。
最後に
私のギターヒーロー村治佳織さんは、学生時代にインタビューを読んだり、テレビに出演されいるのを見たりしてなんとなく人としても素敵だなあ、と思っていました。
ただ、この本を読んで、こんなに共感ポイントが多い方だとは思っていなかったので驚きました。
もしかしたら私もインタビューを見ていた頃から年を重ねて、ものの見方が変わってきているからかもしれません。
この「いつのまにか、ギターと」というタイトルは、なりゆきにまかせて今を大事に、ご自分のペースでしなやかに生きる、そんな村治さんにぴったりだと思いました。