ゴールデンウィークくらいから仲間と続けている作曲チャレンジ。気づけば9曲目に突入し、お題を考えるのが大変になってきました。
…ということで、人の力を借りてお題を出してもらい、出てきたのが「Hey Jude」が歌えるコード進行で曲を作ろう!というお題。今まで抽象的なお題が多かっただけに新しい切り口です。
私は毎回作曲チャレンジでは、何か音楽理論的なテーマをつけて実験みたいに作っているので、迷うことなく今回のテーマは「リハモ」でした。
とっつきづらいなあと思っていたリハモですが、やってみたら意外とハードルが下がったので、今回の作曲で使ったリハモの方法について解説したいと思います。
実際にできた曲と、その方法を比べながらお読みいただけると嬉しいです!
リハモとは
リハモとは略称で、正式には「リハーモナイゼーション」といいます。簡単に言ってしまえば、もともとの曲のコード進行をいじくるという意味です。
言葉の意味を分けると「リ(re)」+「ハーモナイゼーション(harmonization)」で、リサイクルのリと、ハーモナイゼーションが合わさった言葉です。
ハーモナイゼーションというのは、メロディーに和音(コード)を入れるということなので、丁寧な言い方をすると「ハーモニーを再構築する」的な感じでしょうか。
今回の作曲チャレンジのお題が「Hey Jude」が歌えるコード進行で作るということなので、まさにリハモするのに最適な題材ですね。
作った曲紹介
こちらが、「Hey Jude」のコード進行をいじくり倒して作った曲です。
「夢のあと」
今回はなんとなくソロギターで作りたい気分だったので、ギターで弾きやすいように、「Hey Jude」のキーがFメジャーなのに対して、Dメジャーに変えて作っています。
Dメジャーと言いつつ、マイナー寄りの雰囲気にして「Hey Jude」との雰囲気の違いを出してみました。このマイナー寄りの雰囲気も、リハモによって作り出されています。
そして、聴き比べ用に…Hey Judeと、Fメジャーキーにした私の曲です。
リハモを先にやるかどうか
リハモするとはいっても、どうやって作ろうかな?と思って、この2パターンが思い浮かびました。
- メロディーを作ってからリハモする
- 先にリハモしてからメロディーを作る
実際のところ、どちらを先にするのがいいのかはわかりませんが、今回は雰囲気をガラッと変えてみたかったので、先にリハモしてからメロディーを作ることにしました。
実際に作ってみて、雰囲気を変えることには成功したのと、メロディーから作るのでは出なかったようなフレーズも出来たので、今回はこの方法にして良かったと思っています。
できそうなリハモ技を洗い出し!
まずリハモする上で知っておきたいのが、一体どんな技が使えるのか、ということ。リハモと一口に言っても、やり方はいろいろあります。
そこで、まずは自分が持っている知識の中で何ができそうかを洗い出してみて、実際に使ったのがこの2つです。
- 代理コード
- 2−5(ツーファイブ)分解
手数としては少ない気もしますが、代理コードだけでも十分に雰囲気が変わりました。作った曲をもとにそれぞれ説明していきます!
代理コード
代理コードというのは、同じ機能を持つものであれば、別のコードに置き換えることができちゃうよ!という便利な技です。
コードの機能って何?ということで、まず前提として、この2つのポイントを押さえてから説明をしようと思います。
- 3種類のコードの機能
- ダイアトニックコードを機能別に分ける
3種類のコードの機能
コードにはこのような機能を持つ3種類があります。
- 安定さん(トニック)
- 中間さん(サブドミナント)
- 不安定さん(ドミナント)
楽曲の中でこの安定さんや不安定さんが入れ替わり立ち替わり出てくることで、曲に緊張感や安心感といったストーリー性が生まれます。
このストーリーを演出する役割をハーモニー、つまりコードが担っています。曲のコード進行が「安定→不安定→安定」とか、「安定→中間→不安定→安定」といった流れを作り出しています。
わかりやすい例で言うと、幼稚園とかでお辞儀をする時に先生がピアノで弾くあの音。コードでいうと「C→G→C」という進行ですね。このコード進行がまさに「安定→不安定→安定」という流れになっています。
C→Gの流れでくると、次はCに行きたくなる。これが不安定なコード、ドミナントが作り出す雰囲気となっています。
では、次の項目でどんなコードがどういう機能を持ってるのかをざっくりご説明します。
ダイアトニックコードを機能別に分ける
コードの機能は絶対的なものではなく、このキーの中ではこのコードは安定している、といった相対的なものになります。
先ほどのお辞儀の例でも、G単品で出てきたからといって、Cに行きたくはなりません。CとGというコードの関係性があって初めて演出できるものです。
この、相対的な関係をみる上でガイドになるのが曲のキーとダイアトニックコードです。
簡単にいってしまうと、ダイアトニックコードは特定のスケールに使われる音のみで構成されたコードのことです。
細かい説明はこちらの記事をご覧ください。
今回はテーマとなっている「Hey Jude」のFメジャーキーにおける7つのダイアトニックコードを、先ほどの3種類の機能に分類しました。
- 安定さん(トニック):F、Am、Dm
- 中間さん(サブドミナント):B♭、Gm
- 不安定さん(ドミナント):C7、Em♭5
「Hey Jude」の冒頭のコード進行とその機能を書いたので、実際に頭の中で歌いながら眺めてみてください。
| F | C7 | C7 | F |
安定→不安定→不安定→安定
| B♭ | F | C7 | F |
中間→安定→不安定→安定
主に安定のFが不安定のCを挟んでできているのですが、途中B♭が少し雰囲気を変えていい味を出してますよね。こうして、コードの機能によって楽曲の世界観を作ることができます。
改めて代理コードとは
ここまでご紹介したポイントをふまえて、代理コードをご説明します。
簡単にいってしまうと、「Hey Jude」の安定さん代表、Fのコードを他の安定さんであるAmやDmに置き換えても曲が成立するし、その上でHey Judeを歌うことができる、ということです。
同じように、中間さんであるB♭もGmに置き換えることができるし、不安定さんであるC7をEm♭5に置き換えることができる。
これだけでも他のコード進行にする選択肢がだいぶ増えたと思いませんか?
2-5(ツーファイブ)分解
こちらは、1つのコードを2つのコードを使った進行に分解できるというものです。
まず2-5って何?ということなのですが、これはキーの中心に対しての度数を表しています。
Hey JudeのFメジャーキーでいうと、FメジャースケールのFから数えて何番目の音になるか?ということで、2番目のGの音、5番目のCの音が今回の主役です。
先ほどのダイアトニックコードの機能の話に戻るのですが、不安定→安定といった流れのC7→Fというコード進行上で、C7の前にGmを入れても問題ないよ!というのがこの2-5分解です。
もしかしたらどこかで、2-5-1(ツーファイブワン)という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これはまさに、Gm→C7→Fといった中間→不安定→安定という流れのコード進行のことです。
この進行はかなり定番で、とても安心感があり、何か曲を聴いているときに「次はこのコードがくるな」と予測できるのもこういった進行だったりします。
私は今回作った曲ではC7が2小節続くところを、Gm→C7という進行に分解しました。
ここまでの2つの技を使って出来たコード進行がこちらです。カッコでどちらの技を使ったのかも書いています。
Hey Jude のコード進行
| F | C7 | C7 | F |
| B♭ | F | C7 | F |
作った曲のコード進行(Fメジャーキー)
| Am(代理) | Gm(2-5) | C7 | F |
| B♭ | Am(代理) | Gm(2-5) C7 | F |
おまけ。下属調転調
今回のテーマであるリハモとは完全に別ものなのでおまけとして書きますが、下属調転調というものも使ってみました。
「Hey Jude」のBセクションのメロディーを分解すると、Gマイナーペンタで取っているようにも見えます。
そこで、Gマイナーペンタで取れるキーであるB♭メジャーキーに転調してみました。
ちょっと理論的な話になりますが、「Hey Jude」の元のキーのスケールである、Fメジャスケールはシの音がフラットしています。
今回私が転調したキーのB♭メジャスケールは、シとミの音がフラットします。
この二つのキーでフラットする音がミの音があるかどうかという違いだけで、かなり近しいキーと言えるので、滑らかに転調ができます。
裏コードもそうなんですが、音楽は似てるからいけるぞ!みたいな境界が曖昧なところに攻め込む系のテクニックが多いですね…
このFメジャーとB♭メジャーキーの関係を下属調といいます。
「5度圏表」というものがあるのですが、反時計回りで隣のキーが下属調の関係になっているので、他のキーでも反時計回りで隣のキーに転調すれば下属調転調ということになります。
「Hey Jude」の中でかなり特徴的なコードとして、BセクションのF7と、ラストの「♪da da da〜」のところで登場するE♭があるのですが、この二つのコードはFメジャーのダイアトニックコードではありません。
そして、どちらのコードにもE♭の音が入っています。
先ほども書いていますが、Fメジャーキーではシの音しかフラットしないのですが、ここがビートルズの凄いところで、ミ♭の音を使うことでブルース的な雰囲気を出しているんですね。
私が作った曲の中でもここは変えずにE♭のコードを入れることで急にフワッとした雰囲気を出すようにしました。
リハモは分解できれば使える
これまで「リハモ」っていうと敷居が高い気がしていたのですが、どんな技が使えるのか実際に分解してみると、できそうな気がしてきましたし、実際にちゃんと「Hey Jude」が上から歌える曲に仕上がっていました。
今はまだいろいろ考えて作ることしかできないけれど、そのうち演奏でも取り入れられると良いなあと思います。