練習アイディア

暗譜のメカニズムを考える

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あなたは、暗譜が得意ですか?

一曲通して演奏するために、暗譜は避けて通れない道ですよね。

だって、覚えてないと「なんだっけー」ってつっかえるし。

譜めくりしたら、手が止まるし。

私は、暗譜は得意な方だと思っています。

というのも、まず覚えること自体、得意なんです。ネットショッピングでクレジットカード番号をそらで入力できるくらいには。

ああ、そういえば、海馬お化けって言われたこともありました。

ただ、この覚え方には限界があります。たぶんカード番号も、3つ以上覚えるのは無理。暗譜するのにちょっと有利だけど、万能ではありません。

暗譜はクレジットカード番号を覚えるのとは違う回路が働いているな、という自覚もあります。

では、暗譜をする時に、いったい何が起こっているんでしょうか?

このメカニズムを知ることで、もっとラクに暗譜できるかもしれない・・・ということで、ちょっと考えてみました。


脳内へのしまい方

暗譜は、曲をたくさんの要素に分けて脳内にしまっておき、演奏時にそれらを組み合わせて取り出しているような感覚があります。

じゃあ、どうやって脳内にしまっているのか。それぞれの要素に名前をつけてみました。

  1. メロディー
  2. ビジュアル
  3. マッスルメモリー
  4. 付せん

これらの要素を掘り下げていきます!

曲の構造をみます。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ・・・といった具合に。

ある程度、型が決まっているのでテンプレートを知っておくとラクです。物語でいえば、起承転結。

桃太郎なら・・・

  1. おばあさん、桃を拾う(起)
  2. 桃太郎爆誕(承)
  3. 桃太郎、きび団子で勧誘(転)
  4. 鬼ヶ島で鬼と決戦(結)

というふうに、型に当てはめてブロック分けする感じ。

この「型」をみつける感覚、暗譜するのに一番大事かもしれません。ここを押さえておけば、覚える労力をかなり圧縮できます。なんせ、音楽は繰り返しが多いので・・・

メロディー

シンプルに言うと、楽器を持たずに最後まで歌えるかどうか

いきなり楽器を構えて、楽譜を頭から読み始めようとすると、見落としがちな要素です。

楽譜が読めちゃう人ほど、まずメロディーを歌うことができるのか、セルフチェックしてみてください。

単純に好きな曲を演奏する場合なら、楽譜を見る前からクリアしているかもしれません。

音楽に馴染みがある人ほど、楽にできる要素なんじゃないかなーと思っています。

ビジュアル

ギターであれば、押さえ方をスクリーンショットして脳内にしまう感じです。

あと、押さえ方を独自のイメージに変換していることもあるかもしれません。「平行四辺形」とか、「サイコロの5」とか。

ギターは視覚的に演奏しやすい楽器なので、この要素、相性はバツグンに良いです。

コードの押さえ方だって、押さえるのは4本指なのに、1枚の絵として覚えてますもんね。

「カタチをとらえる」ことが得意な人ほど、よく使っていんじゃないかと思います。

マッスルメモリー

ある動きをしたら、次の動きが芋づる式に思い出される・・・なんてこと、ありませんか?

繰り返し練習するうちに、手が勝手に動くようになるアレ

お風呂で頭を洗っていて、あれ?リンスしたっけ?どこまでやったっけ?・・・みたいな。

練習あるあるだと、繰り返し2回目で変わる箇所を、手が勝手に動いて1回目のフレーズ弾いちゃった!みたいなやつですね。

身体感覚として脳内にしまわれているのかなーと。

付せん

私は曲を練習している時に、その時考えていることと練習箇所が結びつくことがあるんです。

「演奏していたら、山田さんの顔が浮かんだ」のであれば、その箇所は「山田さん」という付せんを、「バナナが食べたくなった」箇所は、「バナナ」という付せんを脳内でペタッと貼る感じ。

これ、一つめの「型」と似てるようで、ちょっと違います。本の章ごとにまとめるというより、気に入ったページに印をつける感覚に近いです。

脳内からの引き出し方

暗譜というと、覚えることに注目しがちですが、実は脳内から引き出す時にこそ、あらゆる処理がなされているように感じています。

というのも、脳内にしまった5つの要素、どれかひとつだけではなく、その時その時で必要なものを組み合わせて取り出している気がするんです。

例えば・・・

「メロディー」と「ビジュアル」
メロディーを脳内で再生すると、指板のイメージが思い浮かべられる。

「マッスルメモリー」と「メロディー」
なら、指の動きと連動してメロディーが再生される。

「付せん」と「ビジュアル」
山田さんの顔が浮かんだ途端、押さえ方の形を思い出せる。

このように単純に2種類ではなく、複合的に組み合わさっているかもしれません。

そして、それぞれの要素を結びつける線を増やせば増やすほど、暗譜がよりしっかりしたものになって、引き出しやすくなるように感じます。


暗譜は感覚を総動員

勝手に名前をつけてしまいましたが、暗譜には

  1. 言語感覚(型・付せん)
  2. 視覚(ビジュアル)
  3. 聴覚(メロディ)
  4. 身体感覚(マッスルメモリー)

といった、複数の感覚を駆使していそうです。

うん、そりゃあ、演奏すると脳が活性化するわけですよね・・・

これらの感覚、それぞれ人によって得意・不得意あると思うんです。

ゲームのレベル上げでよくある「力」「体力」「素早さ」「魔力」のバランスみたいな感じ。

なので、先ほど挙げた要素の中でも、「あーこれは自分もやってるな」というもの、「これはあんまりやってないな」というもの、分かれていたんじゃないかと思います。

もし、暗譜があんまり得意じゃない・・・ということであれば、いつもは使わない感覚を使ってみるのも、アリかもしれません

おまけ:認知特性のはなし

この暗譜で感覚を総動員する話は、「認知特性」と言われるものに近いかもしれません。

私が以前読んだ本なのですが・・・

認知特性とは
外界からの情報を頭の中で理解したり、整理したり、記憶したり、表現したりする方法

医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン (本田真美 著) より

この認知特性には以下の6つのパターンがあるといわれています。(身体感覚は入っていませんが、本の中では番外編として扱われています)

  1. カメラタイプ(視覚優位者)
    →写真のように二次元で思考する 
  2. 3Dタイプ(視覚優位者)
    →空間や時間軸を使って三次元で考える 
  3. ファンタジータイプ(言語優位者)
    →文字や文章を映像化してから思考する 
  4. 辞書タイプ(言語優位者)
    →文字や文章を図式化してから思考する 
  5. ラジオタイプ(聴覚優位者)
    →文字や文章を耳から入れる音として情報処理する 
  6. サウンドタイプ(聴覚優位者)
    →音色や音階といった音楽的イメージを脳に入力する

自分はどのタイプだろー?と気になった方は、著者の本田真美さんが作った診断ツールがあるので試してみてください。

認知特性について、もし詳しく知りたいと思ったら、読んでみてください!