アドリブの練習をしていると「フレーズを覚えましょう」、「コピーをして分析しましょう」ということをよく言われます。
ギター講師の方のYouTubeを見てもレッスンを受けてもみなさん仰ってますし、その練習が有効というのは頭では理解できていました。ですが実際にはエチュードや誰かの演奏が採譜されたものを分析したり弾いたりしてもピンときていませんでした。
そしてコピーは時間がかかるという意識があり、まとまった時間をとってからやろうかな…となかなか重い腰が上がりませんでした。
やりたいと思いつつできていなかったところに、ちょうど最近レッスンで書きソロを作ってみましょうという課題が出たのでそれを始めました。それと並行して個人的な課題曲として練習している曲も試しにいくつかコピーをしてみることにしました。
この両方を同時にやったことで既存の譜面を練習するのとは別の効果があるように感じてきました。今回は実際にコピーと書きソロを同時進行したら見えてきたことについてお話したいと思います。
書きソロで見えたこと
丸腰アドリブとの違い
これまでの私の練習方法は課題曲のバッキング音源に合わせてひたすらアドリブを取ってみるというものでした。
この練習は曲のコード進行を分析して、どのスケールが使えるかを見てから行なっていますが、何度か練習していくうちに自分の弾きやすい定型文のようなもの(あまりかっこよくない)にまとまってしまうという課題がありました。
丸腰でアドリブを何回やってもその時自分の中にある素材からひねり出しているので、それ以上のものが出てこないのは当然といえば当然なのですが…
一方で書きソロは曲が進行している中で瞬時に思いつくものよりも、時間をかけられるぶん自分の知っているものを整理しながらアウトプットできます。
今回は書きソロを作る上で自分の中で2つのルールを決めていました。ひとつは本に載っている定番のⅡ-Ⅴ-Ⅰフレーズを意識的に入れるということ。もうひとつはなるべく音飛びさせず自然なつながりにすることです。
時間をかけて考えることと、ルールの中で作ることによって、これまでの教則本などで見てきたどうやったらこんなの出てくるの?フレーズの意味がなんとなくわかってきました。
クロマチックの必然性
自分のアドリブソロがどうしても拙く聞こえてしまっていて、そこから脱却するためにフレーズを身につけようと「ギター無窮動トレーニング」という教則本を購入しました。
この本は休符なしの音符で埋め尽くされたフレーズがたくさん詰まっている本です。評判も良いので購入しましたが、私は少し弾いてまだこのレベルじゃなかったかも…と思い、一旦封印しました。
なぜかというと、この本のフレーズにはクロマチックのアプローチが多用されているのですが、その頃はスケールを使ってアドリブを取る練習をしていたため、当時の自分の練習してきたことと少し外れる気がしたからです。
この時はクロマチックのアプローチが出てくる過程がよくわからず、スケール中心に見ていた私には消化しきれませんでした。
ですが、今回の書きソロをしていて「できるだけ音をつなぐ」というルールを課したことと、コードトーンを表拍に入れられるようにしたことでクロマチックを入れたくなる理由がようやく理解できました。
実際に書いたフレーズもありそうな感じ。悪くない。そう思ってレッスンでチェックしてもらったら、「これいいですね、もらいます」というフィードバックだったので(笑)自分が理解したことの説得力が増しました。
コピーをして見えたこと
意外とシンプル
コピーでまずやったことは、ギターソロの部分だけではあるのですが同じ曲のレコーディング音源とライブ音源×2の計3種類の採譜です。
全て採譜した後に弾いてみたのですが、レコーディングの音源は確かに作り込まれた印象のフレーズでしたが、全体的にライブ音源も含めて意外とシンプルなことをやっているんだなあと感じました。
同じ人のいろいろなバージョンを分析すると弾いている内容こそ違うものの、この辺りはこういうシステムで弾いてるんだろうな、という思考プロセスが共通しているのが見えてきました。
音源を聴いているだけの時の印象がとてもカッコいいソロだったので、採譜して分析したらシンプルなソロだったことのギャップに驚きました。
今まではカッコいいアドリブを聴いていると、自分の知らない物凄いことをやっているんじゃないかと敷居の高いものに感じていましたが、今回コピーをしたことで自分の知ってる範囲でアドリブをしてもカッコよくできる方法がありそうと思いました。
弾き込んでから手放してみる
採譜したものやエチュードなどの既成の譜面を練習していて、これまで良くないなあと思っていたのは結局譜面通りに弾いてしまい応用ができないことでした。
せっかくコピーして分析までしたのに丸覚えになって弾かなくなったら忘れていってしまうのが嫌だったので、今回は何度か弾き込んだ後にそのソロを手放して自分なりに弾いてみるということを試してみました。
はじめはコピーそのままか、3つのパターンをツギハギして…という感じだったのですが、一週間くらい続けているうちに自分が弾きやすい運指に変えてみたり、音の配置を入れ替えてみたりと少しずつ丸コピーとは違うものができてきました。
まだまだこの練習の効果がどのくらいあるのかはわかりませんが、少しずつ消化できているような気がしています。
インプットとアウトプットのバランス
今回ようやく重い腰をあげ、書きソロやコピーとじっくり向き合っただけの学びを得られたという手ごたえを感じました。時間がかかるからといって後回しにしていてはいけませんね…
書きソロとコピーを同時進行して良かったと思ったのは、インプットとアウトプットの両方を同時にできたことでした。これまでどちらかというとインプットの方に重きを置いてしまい、アウトプットを丁寧にできていませんでした。
今回の書きソロや、コピーしてから手放すという一連の練習をすることでしっかり自分がこれまでインプットしてきたことを使うという機会が設けられて、知っているものをもう一段階深い階層に落とし込めたという感覚です。
これがすぐに自分のアドリブに活きてくるかはわかりませんが、インプットとアウトプットをバランスよく行い、蓄積していくことで進歩が見込めるのではないかという希望が出てきました。この半年間くらいずっとモヤモヤしていたことがようやく晴れそうです。