◯augっていうコード。表記は見たことあるけど、あまり登場しないし、パッと弾けないコードでした。感覚的には、◯dimの仲間っぽいのに、◯dimよりもずっとずっとレアキャラかも。
同じくホールトーンスケール、聞けばホールトーンだ!となるけど自分ではあまり使わないし運指もよく覚えていない…
いずれも知ってるけど、見て見ぬフリしていたというか、使用頻度低いし後回しでいいや!って感じで過ごしていました。
そして…ついにこのお二方と対峙する時がやってきました。5月から仲間と一緒に続けている作曲チャレンジという遊びで、個人的なテーマとして使ってみよう!と重い腰を上げることになったのです。
使ってみたら、ついに自分の中にインストールできたのと、狙い通りの不思議な雰囲気を作り出すことができました。
今回は作った曲を元に、augコードとホールトーンスケールについてお話したいと思います。
まずは耳で不思議感を体験してください
augコードとホールトーンスケールを使った曲がこちらです。Bセクションの最後や、一番最後の和音にこれらを使用しています。これを使っただけでとても不思議な響きになりますよね。
「MAZE / DOZE」
今回なぜaugコードとホールトーンスケールを使ったかというと…
作曲チャレンジのお題が「白河夜船という四字熟語の世界観を表現してください」というものだったからです。ちなみに、白河夜船の意味はこんな感じ。
《京都を見てきたふりをする者が、京の白河のことを聞かれて、川の名だと思い、夜、船で通ったから知らないと答えたという話によるという》
1 熟睡していて何も知らないこと。何も気がつかないほどよく寝入っているさま。
小学館 大辞泉より
2 知ったかぶり。
この、一つ目の「熟睡して何も知らないこと」というところから、居眠りの迷宮に入り込んでしまった不思議な世界感を表現するために、augコードやホールトーンを使うことにしました。
augコードとは
「オーギュメント」と読みます。「増加させる」という意味の言葉です。
何を増加させているのか…という説明の前に、このコードの構成音について書きたいと思います。ひとまずCaugの構成音をみてみます。
Caug → ド、ミ、ソ♯
度数で見てみると、ルート、メジャー3rd、♯5thとなります。ちょうど、Cコードのソの音をシャープさせたかたちになります。
このシャープさせたソ、つまり♯5thのことを日本語で「増5度」、英語ではaugmented 5th(略してaug5th)といいます。
弾いてみるとわかるのですが、いつものCのコードを間違っちゃたような、なんとも言えない不協和音っぽい音が不思議感を演出します。
augコードの転回形
少しだけ踏み込んでしまうのですが、「転回形」のお話をしておきたいと思います。
転回形というのは、コードの構成音が一緒であれば、どのような順番で積み重ねても同じコードという仕組みを利用したものです。
Caugであれば、ドミソ♯の順でも、ミソ♯ドの順でも同じCaugなのです。
ここで、augコードの特徴である全ての音が均等に3度ずつ離れていることによってミラクルが起きます。
何が起きるかというと、たとえばEaugの構成音をみてみると、「ミ、ソ♯、ド」となるのですが、これは先ほど説明したCaugの転回形です。
さらに、なんとなく想像がつくかもしれませんが、G♯augも構成音が「ソ♯、ド、ミ」となります。
Caugも、Eaugも、G♯augも全て転回形の関係にあり、同じコードなのです。これは今回説明はしませんが、dimコードでも言えることですね。
augコードの使い所
このオーギュメントコード、どういったところで使うのかというと…その不安定な響きから、ドミナントセブンスのコードの代わりとして使うことができます。
今回、私の曲では、B7(♯9)の代わりとしてBaugを使っています。構成音を見ながら解説しますね。
B7(♯9)→ シ、レ♯、ラ、ソ
Baug → シ、レ♯、ソ
ほぼ構成音が共通しています。いつもこのシリーズ、だいたい似てるから代用できます!ってなるのですが、本当にそれらしく聞こえればOKなユルさなのです…
ホールトーンスケールとは
ホールトーンスケール、ちょっと聞いたことがある人ない人いそうな感じですが、名前の通り、スケールのひとつです。
ホールトーンというのは…「Whole Tone」といいます。穴ではない方です。日本語では「全音音階」といいます。つまり、すべて全音ずつ離れた音で構成されているスケールです。
ギターで1フレットおきに弾くとホールトーンスケールが弾けます。
「ド」の音を起点として全音ずつ上がっていったCホールトーンスケールの構成音がこちら。
Cホールトーンスケール
ド、レ、ミ、ファ♯、ソ♯、ラ♯
ここで、セットで考えたいのがCaugのコードです。構成音が「ド、ミ、ソ♯」でした。全ての音がこのホールトーンスケールに含まれています。
つまり、Caugコードの上で、Cホールトーンスケールを弾くことができるということです。
そして、もうひとつ面白いのが、さらにもうひとつのコードの上でもCホールトーンが弾けます。
Caugの構成音になかった音を取り出してみます。「レ、ファ♯、ラ♯」ですね。この音で構成されるコードは、Daugになります。
つまり、CホールトーンスケールはCaugの上でもDaugの上でも弾けてしまうのです。先ほど説明した「転回形」も加えるともっと弾けるコードが増えます。
私はこの仕組みを応用して、BaugとCaugの二つのコードとBホールトーンスケールを使ってフレーズを作っていきました。
一度使ってしまうと慣れる
レアキャラだし、なんだかとっつきづらいし…で、長らく後回しとなっていたaugコードさんとホールトーンスケールさんですが、一度作曲のために!と思ってちゃんと触ると案外慣れてしまうものですね。
まだまだセッションで使えるレベルほどには染み込んでいませんが、パッとコードが弾けないというところからは脱出できました。
ちょっと敬遠してたけれども、いつか覚えたいなあ…と思っているコードやスケールは、思い切って使ってしまうと覚えられてしまうものですね。
そういう意味で作曲チャレンジという遊びは自分の知識を定着させるにはぴったりだったと思います。作曲でなくても、どこかセッションなどで使ってみてしまうのも一つの手かもしれません。