絶対音感と相対音感って音楽をやっている人だとよく耳にする言葉ですよね。絶対音感はテレビなどで「物音がドレミで聞こえる」と言われていたりもするので、「なんだかすごそうな不思議能力」として世間的にも認知されているように思います。
私は小学生の時にピアノを習っていたおかげで、楽器の音はなんとかドレミで聞こえるくらいの中途半端な音感があります。中途半端ではあっても耳コピなどをする場合は時間短縮できてとても便利ですが、ギターを練習する上では都合が悪いこともあると感じています。
音感はすでに備わってしまって仕方のないものなので、折り合いをつけていく方法を模索するのが良いのかなあと考えています。
同じような音感の人でも考え方などは違ったりするかもしれませんが、私の一例をまじえながら音感とギター練習について書こうと思います。
音感とドレミの話
絶対音感と相対音感
まずは言葉の定義をおさらい。ウィキペディアからの引用です。
絶対音感(ぜったいおんかん、英語:Absolute pitch)は、ある音(純音および楽音)を単独に聴いたときに、その音の高さ(音高)を記憶に基づいて絶対的に認識する能力である。 狭義には、音高感と音名との対応付けが強く、ある楽音を聞いたときに即座に音名・階名表記を使用して表現できる能力である。
Wikipediaより
相対音感(そうたいおんかん、英語: relative pitch)は、基準となる音(純音および楽音)との相対的な音程によって音の高さを識別する能力である。
Wikipediaより
だいたい認識している通りでしたが、今回のテーマである中途半端な音感も「音名表記を使用して表現できる」ことから、どちらかというと絶対音感の方に含まれそうです。
この記事では中途半端な音感は広義の絶対音感として書くことにします。
音名と階名、固定ドと移動ド
ピアノ教室で初めて教わったことはドレミ…という音の名前でした。楽譜や鍵盤上でこの音がド、この音がレ、というように「ドレミ」を「あいうえお」の文字を覚えるのと似たような感覚で教わりました。このように特定の高さの音につけた名前を音名といいます。固定ドともいわれています。
一方で、階名(移動ド)と呼ばれるものがあります。これは、音名が何であってもキーの中心となる音をドと設定し、他の音はそこからの距離に応じてレ、ミ、ファ…と呼ぶものです。
たとえばドレミの歌の「ドはドーナツのド」をキーの中心がド(Cメジャー)で歌えば歌詞の「ド」は音名と階名ともに「ド」です。キーの中心のがソ(Gメジャー)で歌えば音名は「ソ」、階名は「ド」ということになります。
絶対音感があると特定の音と音名とが結びついているので、階名もドレミと呼ぶことに違和感を感じる人が多いと思います。
Gメジャーキーのドレミの歌の例だと「ソ」で聞こえている音を階名「ド」と呼ぶことになり混乱してしまうので、階名のときは数字で呼んでドレミと別のものと扱うこともあります。私も数字で見るようにしています。
音名と階名の詳しい説明を見たい方はウィキペディアをご覧ください。
ギターという楽器の特性を考える
ギターはひとつの楽器の中に同じ音が出せる場所が複数箇所あります。例えば1弦1フレットのFであれば、2弦6フレット、3弦10フレット、4弦15フレット…といったように鳴らせるポイントが複数あります。これにより、押さえる形をずらしていけば転調に対応できるというのがギターの良さです。
例えばFコードは、下の図のように2フレット分ずらせばGコードになります。コードだけでなく、スケールも同じ形でずらしていけば別のキーのスケールになります。カポタストという道具がまさにその特性を利用したものですね。
ピアノの場合はそれぞれの鍵盤に特定の音が割り当てられており、同じ音が割り当てられた鍵盤はありません。また、白鍵と黒鍵の並びも決まっているためオクターブはわかりやすいですが、転調した時にギターのように視覚的に同じ形でずらすことは難しいです。
下の図はギターの例と同じようにピアノでFコードとGコードを比較しました。視覚的には少し違った形になります。
ピアノから離れてだいぶ経ってしまったので、実際ピアニストの方が普段コードなどをどう視覚的にとらえて演奏されているのかは興味があります。もしこれを読まれているピアニストの方がいらっしゃったら教えてください!
楽器に合わせた考え方
固定ド、移動ドの考え方を楽器の特性にあてはめて考えてみたいと思います。
ピアノは白鍵と黒鍵の並び方に特徴があるので、特定の音を見つけやすいつくりになっています。そのため固定ドの考え方と相性が良いです。
キーボードのトランスポーズ機能(弾いている場所は同じで出す音の高さを変えられる機能)は、絶対音感を持っている方だと気持ち悪くて使えないという話をよく聞きます。これは鍵盤の場所を音名で覚えているために起こる現象です。ちなみに私はカポタストが同じような理由で苦手なのでたまにしか使いません。
ギターはどの弦のどのフレットが何の音で…といちいち考えて弾くよりも、押さえる場所をかたまりで覚えて弾く方が効率が良いつくりになっています。あるコードやフレーズの形を覚えてしまえば、中心となる音を基準に同じ形を押さえることで異なるキーでも同じフレーズを使うことができます。ギターは移動ドの考え方と相性が良い楽器です。
アドリブ本などを見るとよく「手癖フレーズ」という言葉を目にします。これは形で覚えていった結果、頭で考えるよりも先に手が動いて出てきたフレーズのことを言っています。ギターの特性がよくわかる表現ですね。
練習方法を模索する
ジャズギターなどでアドリブを習得する上では、キーの中心や、コードのルート音からの距離で音を見たほうが良い局面が多々あります。つまり、移動ドの考え方です。
ピアノから入り、ギターを弾くようになった私は、固定ドの考え方が体に染み付いています。演奏する時も形で見るよりも先に音名から押さえる場所を探すため効率が良くないので、移動ドの考え方に寄せていく方がいいだろうなあと思い、練習方法を模索中です。
今は試しに固定ドから一度離れて「形で覚える」ことに注目した練習をしています。スケール練習にしても、一度に12個のキー全てを網羅的に弾くというやり方です。
中にはBやF♯といった耳が慣れていないキーも出てくるため、耳と音名だと対応できなくなる状況が生まれ、結果的に形を見るようになるのではないか、という仮説を立てています。
まだ始めてから2週間くらいなのでこれがベストかどうかはわからないのですが、しばらく続けてみようと思います。
絶対音感持ちだと譜面と仲良しな人も多いのではと思います。こちらは私の譜面にまつわるエピソードをご紹介していますのでよろしければ合わせてお読みください。